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三重の大自然をフィールドにした野外保育で、子どもを育てるという選択


我が子には、自然と触れ合いながら育って欲しいと願う親は多い。しかし、野外保育を我が子に選択させる親はまだまだ少ない。いや、野外保育という選択肢を知らない親が多いのが現実だろう。

今日は員弁老人福祉センターにて、三重県内で野外保育に取り組んでいるスタッフと保護者が、三重県の職員と意見交換を行う「みえ出前トーク」が開催されたので、足を運んできた。

この交流会は菰野町の森の風ようちえんに子どもを通わせている、1人の保護者の「森には、子どもの力を育む要素がたくさんある。そこを大事に保育している野外保育活動を、一つの教育として認めてほしい。」という願いから実現した。



交流会では、行政は野外保育を広めようと様々な努力をしているが、実行に移したり制度が整うまでには相当な時間を要する、ということが話された。ごもっともではありながら、もしかするとスタッフや保護者にとっては、物足りない回答もあったかもしれない。

しかし、「行政の制度が整うのを待たずして子どもは日々成長して行く。野外保育の認知度を上げ、保育の選択肢のひとつとなりたい。」という想いを届けるべく、私は私とまちこの野外保育での体験を本誌と本サイトで掲載していくことを決めた。



園舎を持たず、活動の場は拠点周辺の大自然。野外保育のほとんどがこのスタイルであると言っても過言ではない。現行の保育園や幼稚園の枠組みにはまらないため、認可外保育園として運営する事が多い。園舎がないことなどから自主保育や野外活動という名目で運営している団体もある。

今回のイベントに声をかけてくれたのは、いなべ市で野外保育を行なっているさともり自主保育の服部まゆみさん。私が野外保育を知るきっかけとなった人だ。「無認可保育園でもない自主保育」そう聞かされた時の印象を今でも覚えている。



危ない。

「三重の恵まれた大自然がフィールドです」聞こえはいいが、自然には危険がたくさん潜んでいる。そして野外保育のスタッフ全員がその事実を認めている。そんな危険も含めて、大自然から学ぶのだという。

小さな危険を日常で経験することで、大きな危険を回避する能力を育てるという言葉に納得しながらも、当時、認可・認可外問わず保育園での事故のニュースが増えていたことや、私自身初めての子育てだったことも重なり、安全な空間ですら事故が起きるのに、大自然という危険だらけの場所をわざわざ選択する事自体に疑問を感じている自分がいた。

ふと、小学生の頃に御在所岳に山登りをした際、足を踏み外して何十段もの階段と坂道を転げ落ちた記憶が蘇る。奇跡的に比較的軽傷で済んだものの、母にこっ酷く叱られた。あの時の恐怖からあれ以来一度も山には自分の足で登っていない。

そんな悪い記憶がちらついたまま、さともり自主保育にまちこと参加したのは去年の12月のこと。まちこを自然に触れあわせたいという気持ちからだった。その日のフィールドはみえ県民の森。到着するなりまちこ



水たまりへ突入。

明らかに自然に触れ合わせることよりも、SNS映えを意識してコーディネートした服装で、長靴なんて持ち合わせておらず靴はずぶ濡れ。1秒でも早く靴を脱がせたい。足を拭きたい。

でも、見たことのないキラキラした笑顔で水たまりをたくさん踏みしめて遊ぶまちこに見とれて、足が動かない。気づいたら水たまりに友だちが加わっている。まちこはもっと笑顔になった。この笑顔をずっと見ていたいと思った。

私は、まちこに自然と触れあわせたいと願いながら、その自然は人工でもいい…いや、なんなら安全であれば人工的な自然の方がいいと思っていたのだ。



その日まちこはお日さまの光で靴を乾かしながら、裸足で芝生を走って、落ち葉を拾って、野生のフユイチゴを食べて、給食を何度もお代わりして、たくさん転んだ。でも、一度も泣かなかった。転ぶ度に3〜4歳のお友達が駆け寄ってきて、大丈夫か声かけをしてくれるから、私の出番なんかどこにもない。

私にできることは、ただ見守ることだった。

さともり自主保育はじめ、野外保育を行なっているスタッフには特徴がある。それは子どもを「信じる」「見守る」ということ。そして子ども自身に「決めさせる」という事だ。決して、危険がないように先に大人が手を加えたり、ケンカの仲裁に入ったりはしない。

しかし、それは単純に放置しているのではない。 一定の距離を保って見守り、どうしても大人の助けが必要な時は速やかに動ける準備を、常にしているのだ。だから、おしゃべりに夢中になっていたり、スマホをずっといじっているなんてことはなく、参加しているスタッフも保護者も手を出さないだけで、ずっと目配りをしている。



そうやって、子どもたちに元々備わっている成長する力を大人が信用し、子どもたち自らが自分自身の力を無限大に伸ばして行く。

数日後、雨上がりの日にお出かけした時、水たまりを見たまちこは「ばしゃばしゃ。ちーたいね(冷たいね)」と言って水たまりを避けた。

「今は、水たまりに入らない方がいい」と一歳の子どもが自分で決めることができた。今では野外保育という選択肢が私の中に確かに芽生えている。

そういえば、御在所岳で足を踏み外したのは、下りの階段を駆け下りていたからだと思い出した。「山道を走らないほうが、ケガをしない」という経験があれば、あんな急な階段を駆け下りなかったかもしれない。恐怖に感じていたのは、もしかすると母の怒鳴り声だったのかもしれない。

最後に今日一番心に響いた、森の風ようちえんの園長先生の言葉を紹介したい。

子どもが山へ入ると山が綺麗になるんです。
藪の中で、自然を使って子どもたちが遊ぶうちに、
藪は里山に生まれ変わるんです。

協力/さともり自主保育
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